先日、台湾・台北にて行われた「Shadowverse: Worlds Beyond」のメディア向けイベントで木村唯人プロデューサーへのインタビューが実施されました。
この記事ではインタビューの日本語訳をお届けします。
Q.対戦型カードゲームアプリ『Shadowverse』は2016年のリリースから今年で10周年を迎え、多くのスマホゲームの中でも安定した人気を誇る作品です。『Shadowverse: Worlds Beyond』は元々2024年のリリースを予定していましたが、前作が間もなく10周年を迎えるこの時期に、なぜ同じく運営型の新作ゲームをリリースするのでしょうか?既存のゲームで大型アップデートを行うのではなく、独立した完全新作の続編としてリリースする意図は何なのでしょうか?
A.前作『Shadowverse』を約9年間運営してきましたが、将来的に20年、30年と発展させていくことを見据えた際、技術的な限界も認識しており、新しいアプリとして再出発する必要があると考えました。新しいアプリにすることで、新たなゲーム体験の楽しさをお届けできるだけでなく、新規のプレイヤーにとってもより参入しやすいタイミングとなります。実際にプレイしていただければ、私たちの意図をご理解いただけると信じておりますので、ぜひ新作にご期待ください。
Q.過去に両作品は今後並行して運営していくとお話ししましたが、現在も多くのプレイヤーの方々が『Shadowverse: Worlds Beyond』に期待を寄せている一方で、『Shadowverse』の今後の運営状況について不安を感じている様子が見受けられます。今後の両作品の運営方針と目標について、少しお聞かせいただけますでしょうか?
A.前作『Shadowverse』では、プレイヤーが過去のカードを使って安心して遊べる環境を提供することを重視しています。一方、新作である『Shadowverse: Worlds Beyond』では、よりダイナミックで新しいゲーム体験をお届けし、プレイヤー同士が斬新な方法で対戦し楽しめるようにしたいと考えています。
Q.対戦型カードゲームは、デッキの組み方、対戦ルール、多様なカード効果など、新規プレイヤーにとっては参入障壁が高いという印象があります。特にカードゲーム未経験者にとっては挫折しやすい点ですが、この部分に関して『Shadowverse: Worlds Beyond』では、新規プレイヤーをどのように導いていくのでしょうか?
A.ゲーム内には非常に充実したチュートリアル機能をご用意しています。現時点では詳細を多くお伝えすることはできませんが、例えば、プラクティスモードには「AIアドバイス機能(β版)」があり、プレイヤーが実戦形式でゲームの進め方を学べるようになっています。さらに、ゲーム外でも新規プレイヤー向けの様々なコンテンツを準備しており、新規プレイヤーの方々にも気軽に始めて楽しんでいただけるようになることを期待しています。
Q.『Shadowverse』をプレイしたことのない新規プレイヤーに対して、制作チームはどのようにすればこれらのプレイヤーを引き付けることができるとお考えでしょうか?
A.新世代のビジュアル表現や、「超進化」と名付けられたダイナミックなゲーム体験は、さらなる楽しさを提供するだけでなく、プレイヤーがより気軽に、カジュアルに遊べるようにもしています。現時点ではまだ多くの詳細を明かすことはできませんが、今回は「シャドバパーク」といった新機能も追加され、プレイヤーが友人や他のプレイヤーと一緒に遊べるようになります。

Q.『Shadowverse』をプレイしたことのある既存プレイヤーが、『Shadowverse: Worlds Beyond』において新規プレイヤーに対して圧倒的な実力差を持つことへの懸念はありますか?
現時点ではまだ詳細をお伝えすることはできませんが、ゲームシステムに調整を加えておりますので、そこまで大きな心配はしておりません。
Q.『Shadowverse』ではすでに多くの新キャラクターが公開されていますが、今回の新作『Shadowverse: Worlds Beyond』のストーリー概要はまだあまり明らかになっていないようです。新作がどのような物語になるのか、少し教えていただけますでしょうか?
また、『Shadowverse』のキャラクターが新作にも登場するようですが、両作品のキャラクターの関係性はどのようになるのでしょうか。非常に気になります。逆に、新作のキャラクターが『Shadowverse』に登場する可能性はありますか?
A.ストーリー内容については、現時点ではまだ詳しくお話しできません。しかし、今回は従来のように多くのキャラクターが絡み合う群像劇という形ではなく、章ごとに異なる主人公に焦点を当て、それぞれの独立した物語を展開していく構成になっています。
さらに、今回の物語では、様々な世界から選ばれた者たちが、『狼の宴』と呼ばれる戦いに参加します。主要なキャラクターたちは、皆この『狼の宴』の参加者であり、それぞれが異なる理由や想いを胸に、その戦いへ身を投じることになります。

以前、日本で開催されたイベントで「アリサはもう登場しないのですか?」というご質問がありました。これについてお答えしますと、『Shadowverse』の世界と『Shadowverse: Worlds Beyond』の世界は繋がっています。アリサの「困っている人を助ける」という旅はまだ終わっていません。いつかまた、彼女が助けの手を差し伸べてくれる日が来るかもしれません。
また、カードバトルにおいては、前作『Shadowverse』のメインキャラクターたちが「リーダースキン」として『Shadowverse: Worlds Beyond』に登場します。これらの前作キャラクターのリーダースキンは、ゲームリリース時からショップにて販売予定です。
Q.『Shadowverse』は非常に複雑な世界観を持つカードゲームですが、開発者視点から、そもそも何がきっかけで、あるいはどのような着想から、一つのカードゲームにこれほど緻密で豊かな世界観を構築しようと思われたのでしょうか?
A.カードゲームとして継続的に多くのカードパックをリリースし、プレイヤーの皆様に楽しみを提供し続けるためには、「様々な異なる世界を舞台とすること」が不可欠だと考えました。それぞれのカードパックには、それ自体で一つの物語を構築できるほどの豊かな情報量を盛り込み、そうすることで初めて、魅力的な世界観や、そこに息づくキャラクターたちを生き生きと描き出すことができるのです。
Q.ゲーム内で「超進化」という新機能を拝見しました。これは特定のカードに全く新しい恩恵をもたらすもので、非常にクールだと感じました。
この「超進化」のアイディアは、そもそもどのようにして生まれたのでしょうか?開発の視点から、何がこの着想のきっかけやヒントになったのか、お聞かせいただけますか?
A.きっかけは、『Shadowverse: Worlds Beyond』の対戦ルールが概ね完成した際、私が「新世代のデジタルカードゲームを代表するような、何か目玉となるルールを加えたい」と提案したことです。当時、「超進化」以外にも様々なアイデアがありましたが、最終的には『Shadowverse』の最も特徴的な対戦メカニズムである「進化」をさらに強化した「超進化」が、『Shadowverse』IPの新作としての位置づけに最もふさわしいと考えました。
「超進化」の内容は開発過程で何度も調整を重ねました。その中の一つ、視覚的にインパクトのあるデザインとして、超進化したフォロワーの体を大きくするというものがあります。この演出効果に基づき、能力の変化もデザインしました。例えば、「倒した相手フォロワーを吹き飛ばし、相手リーダーにぶつけて追加ダメージを与える」といったもので、これにより「超進化」は華やかでユニークなシステムになったのです。
結果として、気軽にカードバトルを楽しみたいプレイヤーにとってはインパクトの大きいシステムとなり、上級者にとってはフィニッシュコンボ(リーサル手段)の多様性が増し、より深く掘り下げて研究できる要素となりました。皆さんには「超進化」を通じて、これまでにない斬新なカードバトルの楽しさを体験していただきたいと願っています。

Q.「エクストラPP」システムは、後攻プレイヤーがゲーム終盤に強力なカードを召喚しやすくすることで、後攻側に大きなアドバンテージを与えるように見えます。開発チームとしては、ゲームバランスを維持するために、このシステムをどのように調整していくご予定でしょうか?
A.前提として、1対1のターン制カードゲームでは、「先攻」が大きなアドバンテージを持つ傾向にあります。『Shadowverse』では、先攻と後攻の勝率バランスを取るため、後攻に「最初のターンのドロー枚数が多い」、「EPが多い」、「先に進化できる」、「後攻で特に強力なカードを導入する」といったアドバンテージを与えています。
今回の『Shadowverse: Worlds Beyond』では、「先に進化できる」という要素は維持しつつ、新たに「エクストラPP」というルールを導入しました。開発チームでは長時間のテストプレイや大規模なテストを実施し、すでに対戦データから先攻と後攻の勝率がバランスの取れた状態にあることを確認済みです。
もちろん、ゲームのリリース後もプレイヤーの皆様の対戦データを継続的にモニタリングし、万が一問題が確認された場合には、迅速に調整および対応を行っていく所存です。

Q.「クレスト」は、プレイヤーがカードの使用状況や戦場の流れを把握しやすくする、非常に革新的なデザインだとお見受けします。
このシステムの着想はどこから得られたのでしょうか?また、そのコンセプトはどのようにして考案され、あるいは現在の形へと発展してきたのでしょうか?
A.『Shadowverse』はeスポーツ展開を積極的に進めており、プロプレイヤーなどが高度なプレイングスキルを発揮できるよう、ゲーム自体もますます複雑化してきました。そのメカニズムの一つが、いわゆる「リーダーへの能力付与」です。リーダーが数ターンの間、あるいはバトル中ずっと特殊な能力を持つことで、通常では不可能な高度なプレイが実現可能になりました。しかし、これはプレイがより難しくなり、戦況の把握が複雑になるという問題も引き起こし、新規プレイヤーにとっては一つのハードルとなっていました。
『Shadowverse: Worlds Beyond』は、全く新しいデジタルカードゲームとして、新規プレイヤーがより参入しやすいことを目標としています。そのため、従来は認識しづらかった「リーダーに付与される能力」という要素を、バトル画面上で視覚的に表現する「クレスト」という形で導入しました。「クレスト」のデザインにより、アミュレットのようにカウントダウン効果を付与することも可能になり、数ターン持続する能力が画面上でより明確に表示されるため、新規プレイヤーの方々もゲーム内容をより直感的に理解できるようになることを目指しています。

Q.「ナイトメア」は、既存の「ネクロマンサー」と「ヴァンパイア」の2クラスを統合した新クラスとのことですが、なぜこのような統合に至ったのでしょうか?これらのクラスは、前作の『Shadowverse』でもそれぞれに多くの熱心なプレイヤーがいらっしゃったかと思いますので、その理由が気になります。
A.『Shadowverse』は当初7クラスでスタートし、その後新クラス「ネメシス」が追加されて8クラス体制となりました。長期的な運営の過程で、私たちは「クラスバランス」が課題であると次第に認識するようになりました。より良いゲーム環境のため、私たちは各クラスの使用率の格差を縮めることに常に尽力してまいりました。
『Shadowverse: Worlds Beyond』の開発過程では、「果たしていくつのクラスが最適なのか?」という問題を再検討しました。カードの入手難易度、デッキ構築の容易さ、対戦における多様性、そしてアリーナ環境の変化といった要素を考慮した結果、「7クラス+ニュートラルカード」が最適な構成であると判断いたしました。
『Shadowverse』からクラスを一つ減らすという点については、私たちも多角的に議論を重ねました。最終的に、リアルカードゲーム(TCG)である『Shadowverse EVOLVE』で既に成果を上げている構成を参考に、「ネクロマンサー」と「ヴァンパイア」を統合し、「ナイトメア」という新たなクラスとして設定することを決定した次第です。

Q.今後、フォロワーやスペルカードに、新たなキーワード能力やクラス専用のメカニズムが導入される予定はありますか?以前ヴァンパイアクラスが持っていた「復讐」のようなメカニズムのことです。
A.新たなキーワード能力や各クラス専用の能力を追加する予定です。しかしながら、『Shadowverse: Worlds Beyond』は全く新しいデジタルカードゲームとして、新規プレイヤーの方々にも気軽に楽しんでいただくことを主要な目標の一つとしております。そのため、能力が急速に増えすぎてゲームが過度に複雑化することは避ける方針です。多くのプレイヤーの皆様に楽しんでいただけるような適切なタイミングを見計らいつつ、比較的緩やかなペースで、これらの新要素を段階的に追加していければと考えております。
Q.『Shadowverse: Worlds Beyond』は、ゲームプレイやルールの面で従来の『Shadowverse』とは大きく異なり、そのメカニズムはリアルカードゲーム(TCG)の『Shadowverse EVOLVE』に非常に近いものと伺っています。
そこで質問なのですが、この2つのタイトル(『エボルヴ』と『ワールズビヨンド』)が類似したコアシステムを共有している上で、両者の主な相違点はどのような点になるのでしょうか?
A.『Shadowverse EVOLVE』はリアルカードゲーム(TCG)ですので、ゲームデザインにおいては「カードをめくる」「進化カードを重ねる」といった、リアルならではの体験を特に重視しています。また、相手ターン中の特定のタイミングで発動できるカードを通じて、フォロワーの攻撃時における高度な心理戦も楽しむことができます。
一方、『Shadowverse: Worlds Beyond』は全く新しいデジタルカードゲームとして、より多くのプレイヤーに気軽に楽しんでいただくため、「とっつきやすさ」を重視しています。例えば、シンプルなカード能力、分かりやすいUI、そしてエキサイティングな演出効果などです。同時に、『Shadowverse』IPが長年eスポーツシーンで培ってきた戦略的な奥深さを損なうことなく、「超進化」や「エクストラPP」といったデザインを通じて、挑戦しがいのあるルールとゲームプレイを提供しています。
まとめますと、『エボルヴ』の特徴はリアルカードゲームならではの体験と戦略的な奥深さにあり、一方の『ワールズビヨンド』は、とっつきやすさと戦略性を両立させたデジタルカードゲームの新作と言えるでしょう。

Q.今回の新作には、プレイヤー同士がより活発に交流できるバーチャル空間として「シャドバパーク」が導入されると伺いました。これは、全体として「メタバース」の概念に近いもののように見受けられます。
そこで、まず「シャドバパーク」を設計・導入された主な狙いは何でしょうか?そして、プレイヤー間の交流を促す上で、他のシステムではなく、このような形式を採用された理由についても教えていただけますでしょうか。
A.私たちがこのようにしたのは、『Shadowverse: Worlds Beyond』をより多くの方に楽しんでいただき、プレイヤー間のコミュニティを広げたいという強い想いがあるからです。『Shadowverse: Worlds Beyond』はカードゲームがメインではありますが、だからこそ、プレイヤーが一人でルールやテクニックを学ぶのは、実際には簡単なことではありません。私たちは、友人や他のプレイヤーと一緒に学び、共に成長できる環境が非常に重要だと考えています。
そのため、このカードゲームを通じて、プレイヤー同士がより深い繋がりを築き、カードゲームにあまり馴染みのないプレイヤーの方でも友達を作りやすくなることを願っています。私たちは「シャドバパーク」が、プレイヤーがコミュニティを広げるきっかけとなり、誰もがいつでも自由に楽しめるゲームとして、時間と共に進化し続ける──いえ、むしろ「超進化」していくことを目指しています。

Q.「シャドバパーク」は、従来のカードバトルに加えて、プレイヤーが様々な活動を行える中心的なエリア(ハブエリア)になると伺っています。
そこで、将来的に『グランブルーファンタジーヴァーサス』のパーティーモード「ぐらばとっ!」にあるような、独自のミニゲームが実装される可能性はありますでしょうか?
※ぐらばとっ!の詳細はこちら
A.まずはカードバトルに注力いたします。今後の展開については、プレイヤーの皆様の遊び方や好みを踏まえ、その方向性を検討してまいります。
Q.今後、日本以外の海外地域、さらには世界各地の複数のリージョンで大規模な大会が開催される可能性はありますでしょうか?
また、『TEKKEN World Tour』や『CAPCOM CUP』のような、ポイント制のオンライン競技イベント(または大会シリーズ)を導入するご計画はございますか?
A.現時点では、そのような計画はございませんが、将来的には実現できる機会があればと願っております。
Q.台湾および東南アジアにいらっしゃる『Shadowverse』のファン、そしてCygamesファンの皆様に向けて、何かメッセージはございますでしょうか?
A.現在の事前登録やソーシャルメディアでの大きな反響を拝見しますと、台湾や東南アジア地域のプレイヤーの皆様が本作に大きな期待を寄せてくださっていることを強く感じております。
Cygamesとして、この作品は大きな自信を持ってお届けするものであり、過去にプレイされた経験のある方も、今回初めて触れる方も、全ての皆様にこのゲームを心から楽しんでいただけますよう願っております。

