7月22日(火)から7月24日(木)にパシフィコ横浜とオンラインで行われているゲームに関する技術や知識を共有するカンファレンス「CEDEC2025」にてスポンサーセッションとして「『Shadowverse: Worlds Beyond』二度目のDCG開発でゲームをリデザインする~遊びやすさと競技性の両立~」が実施されました。

この講演は株式会社CygamesでTCGプランナー/マネージャーを務める宮下尚之さんが行っています。カードゲームのデザイン上の課題を解決する手法やテストプレイの工程を効率化する手法が紹介されていますので最後までご覧ください。

※CEDEC運営事務局からの要請により、本記事は講演の一部内容を省略したダイジェスト版となります。
※本記事では講演内での表記に合わせ、「Shadowverse」を『シャドバ』、「Shadowverse: Worlds Beyond」を『シャドバWB』と記載致します。


第1章では『シャドバ』についてと題して、シャドバについての前提となる知識を紹介しています。ゲームの遊び方やこれまでの取り組みを振り返る年表が紹介されています。

早くからeスポーツシーンへの参入を行い、大型の公式大会や世界大会、プロリーグを開催してきました。また、2020年からはTVアニメの放送やコンシューマー向けゲームタイトルの発売、リアルカードゲームの発売と多方面に展開していることが分かります。

シャドバが9周年を迎えるタイミングでリリースされた後継作のシャドバWBがなぜ開発されたかについては30周年を目指す『Shadowverse』IPでは新たな施策やゲーム内イベントを開発していく必要がありました。しかし、約10年前に開発したアプリということもあり、技術的な限界があったとしています。

また、アプリを一新することによるメリットとしてシャドバパークなど新しい楽しみ方を提供できる他、新作アプリとしてリリースすることで新規・復帰ユーザーが始めやすいタイミングになるとしています。

カードゲームを開発する上での課題として遊びやすさと競技性の両立先攻有利問題という2つの課題を解決するためのアプローチが第2章で紹介されています。

シャドバでは競技性を担保するためにカード能力とプレイを組み合わせることで複雑化させるというアプローチを取っていました。その結果、カードの能力テキストが長くなるなど複雑なものになっています。

シャドバWBではユーザーが遊びやすく、復帰しやすい環境を作るためにカード能力はシンプルで短くしています。更にルールを奥深くすることでユーザーの負担を少なくしながら、競技性を担保しています。このようにゲームの複雑さや競技性はカードではなく、ルールで担保することが効果的としています。

シャドバでは1枚のカードが複数の能力と役割を持つことで、能力テキストが複雑になっていたのに対し、シャドバWBではカード1枚のバトルにおける役割を絞り、本質的な能力のみを持たせることで能力テキストをシンプルにしています。更に超進化とエクストラPPといった新要素を追加することでルール側でバトルの選択肢を増やしています。

ルールを難しくした分、ユーザーへのサポートも手厚くしています。シャドバWBではAIアドバイス機能やチュートリアルを充実させることで配慮しています。

カードゲームの宿命的な課題となる先攻有利問題ではシャドバでルールとカード能力の両方で対策していたのに対し、シャドバWBではエクストラPPを始めとするルールでより強固に対策する方針を取っています。

第3章ではカードパックの開発体制が紹介されています。

シャドバではカードパックのリリースを含む大型アップデートが年4回だったのに対し、シャドバWBでは年6回に増えています。それに伴い、テストプレイの効率化が求められます。

そこでこれまでアナログで行っていたテストプレイをデジタル化させたことに加え、カードの実装方法を改善することで即日のフィードバックにも対応できるようになり、テスト効率が上昇したとしています。

By cawata-キャワタ-

Shadowverse Magazine代表。過去にはGame Tournament「REIGN」や2Pickレート杯の代表としてコミュニティ大会の制作を担当。